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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
ともすれば顔を出す様々な想いを胸の中に押し込め、俺は至極気軽に改めて訊く。
「それで――どこに行きたいんだよ?」
すると――
「山」
真はシンプルに、そう答えた。
「山って……どこの?」
「どこでもいいよ。とにかく、私は山に登りたいの。せっかく都会を離れて、田舎に来てるんだし」
「つまり、登山をしたい……と?」
「うん。できるだけ、高い山でよろしく」
「お前なあ……山を舐めるなよ。幾ら夏場とはいえ、都会育ちの女がおいそれと――」
「そんなこと言っちゃって。実は自分の体力の方が、不安なんじゃないの?」
「バカを言うな。俺は長野に生まれ育ってるんだぞ。そもそも基本が、お前なんかとは違う」
「じゃあ、心配は無用だね」
「ああ、わかったよ。余裕ぶっといて、泣き言っても知らね―からな」
山か……。まあ、真が望むのなら、それもよかろう。