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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
「……」
「……」
とりあえず明日の行動を決めると、暫く互いに沈黙する時間が訪れていた。
テレビのバラエティー番組では、今年ブレイクした芸人が話題のネタを披露していて、観覧客の大袈裟とも思える笑い声が頻りに響いている。
それを眺める真の横顔は、愉しげでも呆れた風もなくて。只々モニター画面を、何の気なしに見つめていた。
今は何も起ころうとしない、何の変哲もない時間である。そしてそれは、昨日までは感じることのなかった時間。ではなく、真と出会ってから、そんな時間を感じている暇がなかったのだと思う。
不意にそれと意識したのは、この時を貴重なのだと認めていたからなのだろう――か。
――プツ、と。突如、テレビは消された。
真はベッドの上にリモコンを放ると、一つ猫のような伸びをしてから立ち上がる。
それから、俺の方へと歩み寄った。