この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
「ねえ――なんで、今夜に限ってツインの部屋なの?」
俺の居るベッドの端に腰掛けると、真はそう訊ねてくる。
「ん? まあ、なんとなく」
「ふーん、そっか……」
その刹那、ゆっくりと真の顔が近づいていた。
「山に行くのなら、明日は早いぞ。今日はさっさと寝た方が、身の為だ」
「私なら――平気だよ」
そう告げて迫る唇をかわすように、俺は咄嗟に身体を起こす。
その態度を不審に思ったのか、真はまるで独り言のように呟いた。
「あれ? 私、なにかオジサンを怒らせるようなこと、したっけ?」
俺は立ち上がると、その背中に向けて言う。
「怒ってねーだろ。ちょっと、風呂行ってくるわ」
「そう……わかった」
微妙な空気を残したまま、俺は部屋を出て行った。