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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
その後、大浴場で簡単な入浴を済ませると、部屋へと戻って行く。
部屋の中では小さな間接照明が、ひっそりとベッドの周辺を灯していた。隣のベッドを見ると、頭から毛布をすっぱりと被り、たぶん真は寝ている。
俺は物音を絶てないようベッドに腰を下ろすと、暫くの間、無言のままじっと隆起した毛布の形を眺めていた。
妙だと、思わせてしまったかな……。
行きたい場所に連れて行こうだなんて、それすら俺の勝手な押しつけなのかもしれない。真はまだ何も知らされずに、只、確実に何かを感じ始めていた。
三日と言う期限を切った俺自身が、この様である。具体的にどんな様かと言えば、真が俺の傍に居なくなること――その寂しさを想像することから、逃げ出している始末であった。
今は単に大人としての義務感に乗じ、すべきことを粛々とこなそうとして自らを急き立てている。だから面倒なことでも、目を瞑らずにできるのだと思われ。それを科す間は、余計な感情に左右されることもないのだ。