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ホントの唄(仮題)
第10章 想い、知らされて
※ ※
明くる日の朝は、それまでの旅とは打って変わり、慌ただしい始まりとなっている。
「うーん……まだ、眠たいよぉ」
「コラ! お前が行きたいってんだろうが!」
と、ベッドでごねる真を何とか叩き起こすと、まだ朝日が顔を見せる前にはホテルを後にしていた。
それでもこれから登山に行こうと言うのならば、あまりにも呑気なスタートであろう。そもそも前日に思い立ったばかりで、至極気軽に「高い山に登ろう」という態度に無理があるのだ。
まあ、それは今更言うまい。登山をトレッキングという言葉に置き換えてみれば、何とかなりそうな気もする。俺に大した経験がある訳ではないが、長野が地元だけに3000M級で初心者向けのコースが思い当らない訳でもなかった。
晴天を予感させる朝の陽射しを背中に浴びながら、俺は車をハイウェーに乗せて辿って来た旅路を戻って行く。