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ホントの唄(仮題)
第11章 縋り付き、頼む
一体、なんの話だ……って、我ながら思った。
最後の夜かもしれない時に、野球などほっとけばいい。どうせ、我が贔屓チームは最下位独走中である。それなのに――だ。
ワアアア――!
テレビ画面の中の球場が、地鳴りのような歓声に包まれた。
「あ、出て来た。あの人が、その――?」
「そう。当チームの、クローザーだ」
背番号25。ずんぐりとした体型。顎髭を蓄えた顔で、話題の投手が投球練習を始めてゆく。
「うーん……鬼気迫るって感じ。なんか、怖くない? 髭のイメージもだけど、あと目つきもギロッとしてて……」
「そう見せなきゃ、やってられないんだろ」
「どうして?」
「アイツ――ああ見えて、確か歳はまだ23くらい。普段は天然の性格が災いし、チームでは専らイジられ役らしいんだが」
「若っ! 私と、あんま変わんないじゃん。あと、そんなキャラには、とても思えないよ……」
「つまり。それだけ、強い気持ちが必要な仕事なんだろ。それを敵に示す為に、外見すらも飾る」
そう言って、俺が真を見ると――
「……」
その横顔は強張り、コクンと小さく喉を鳴らした。
「さあ、どうなるかな」
俺も真も、マウンド上に立つクローザーの投球に、注目してゆく。