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ホントの唄(仮題)
第11章 縋り付き、頼む
ホント、なんの話してんだよ。また――思う。
野球に無関心な若い女子相手に、自らの趣味を押し付けるようで気が引ける。が、たった今は、そうでもなさそうだ。
「ガンバレ……」
真はぐっと拳を握ると、画面の中のクローザーの彼を応援している。
「よし、あと一人……」
当然ながら俺も、その一投一投に熱を上げた。
試合は九回裏、ツーアウト。あと打者を一人打ち取れば、ゲームセットにまで漕ぎつけている。
しかし、四球とヒットで出したランナーは、それぞれ一塁と三塁を埋めていた。
点差は僅か一点差。すなわち、ヒットを打たれれば同点。長打なら、一気にサヨナラ負けの緊迫した場面だった。
熱気を帯びた両チームのファンが、怒声を混ぜあう。
若い投手は、捕手のサインに頷き、ゆっくりと投球動作に入った。
そんな時のこと――。
「どこへ行く?」
思わず席を立とうとした真を、俺は呼び止めている。