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ホントの唄(仮題)
第11章 縋り付き、頼む
俺の顔をキッと睨んで――直後。
「アハハハ!」
真は、弾けて笑い――
「嫌だ!」
そして、子供がへそを曲げたように、言い切った。その態度の変わり身の速さは、山の天候すら比ではあるまい……。
「どうして、急に『帰れ』なんて言われなくちゃ、ならないのか――わかんないよ」
「急じゃない……。実はずっと、俺なりに考えていたんだよ」
「それは、オジサンの勝手だけども。それなら私だって、勝手にする権利はあるから」
「一体、どうする気だ?」
「さあ、知らない。もう、オジサンには関係ないのでしょう? もし仮に、また――その辺りにいる、別のオジサンに拾われてゆくのだとしても」
「無茶を言うなよ。別に俺が特別どうのという訳じゃないが、誰もが同じようだと思わない方が身の為――」
「だって、しょうがないじゃん! 私は、まだ帰りたくないのに――帰れって言ってるのは――オジサンの方でしょ!」
「真……」
「とにかく、今は――私のタイミングじゃ、ないから!」
真は部屋の角の壁際で、ペタンと膝を抱えるように座り込んだ。興奮で怒らせた肩口の背中は、『梃子でも動かない』との意思を滲ませているかのようだ……。