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ホントの唄(仮題)
第11章 縋り付き、頼む
勝手に、決めんなよ! そう思いながら、なのに――。
他に何をしようと俺自身が、強く希望を思い描いていた訳でもなくて……。
大学での生活も三年目から四年目と、周囲は慌ただしくなってゆくのにも拘らず。就職活動もせずに何となく過ぎる日々を見送っていた俺は、恐らく――ひねくれた心のはそのままに、結局は親父の思い通りになろうとしていたのだろう。
当時の俺の反骨精神など、その程度のものに過ぎなかった。だが――
「病気の彼女の弱々しい姿を前にした時、だった。俺は……初めて親父に抗う理由を、見つけていたのかもしれない」
「じゃあ……?」
「俺は彼女のことを、その傍らで支えるようと決意し。地元には戻ることなく、そのまま彼女の居る東京での就職を希望した」
「その時に、お父さんと喧嘩を……?」
「ああ……派手にやり合ったよ。結果、親子の縁を切ると啖呵を切って、家を後にすると――そのまま、今日まで至っている」
俺は口元に自嘲気味な笑みを浮かべ、そう話した。
すると、真は暫く黙り。それから、その話の流れ上、最も気になる部分への興味を向けた。
「それで……その彼女、とは……?」
遠慮気味に訊ねた眼差しに、俺はあっさりと――こう答えた。
「別れたよ」
「えっと……それは、手術が上手く……いかなくって?」
更に気を遣ったような言葉に、少し申し訳なく思い、俺は――
「いや、手術は成功していた」
と、その顛末を語ろうとした。