この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々

車を近くのコンビニ駐車場に入れ、俺は急ぎその電話に応じた――のだが。
「オ、オイ……なんだって、そんなことになっている?」
その数十秒後、俺はクラクラと目まいがして、思わず左手でこめかみの辺りを押さえていた。
電話をかけてきたのは予想通り拓実であり、そこに問題はなかった。大きく予想を裏切っていたのは、そこから聞かされた話の内容である。
『兄さん、そう邪険にしなさんな。一応は皆、家族じゃないか』
「そういう話じゃねーから。言ったよな――俺は親父と話したいだけだと。それなのに、なに余計なことしてくれてんだよ!」
『酷いなあ。僕だって、これでも色々と気を浸かってるんだよ。会長(オヤジ)の前で裕司兄さんの名を口にすることだって、当家では長年のタブーとされていたくらいだしね』
「まあ……そう言われると弱いが、しっかし、それにしても……参ったな」
『今更、ドタキャンなんて勘弁してくれよ。そんなことしたら、もう一生こんな機会ないと思って』
「それは、わかってる……けどよ」
『では、時間厳守で――色々と言ったけど、兄さんと会えること自体は楽しみにしてる。一応はね――』
拓実との通話が終わる。
一応ね……なんとも、アイツらしい。まあ、最初から拓実のことはいいのだが……。
「オジサン――電話、なんだって?」
「うん……ともかく、行ってみよう。少し、予定は狂ったがな……」
「……?」
答えた俺の横顔を、真が不思議そうに眺めていた。

