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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々
三男の拓実は、俺とは三つ違い。家と疎遠になった頃、高校生だった拓実は当然ながら結婚前であった。十年くらい前に偶然に出くわしていたから、所帯を持ったことは知っていたが、彼女が言うように顔を合わせるのは今日が初めてとなる。
「そうですか――いや、なんというか――まあ、よろしく」
俺はややバツが悪そうに、そう答えていた。弟の嫁に顔を合わせるなんて思ってもいないものだから、それも仕方が無かった。
「ええ、以後――どうぞ、顔見知りを」
見たところの高崎香苗は、アラサーくらいの清楚でつつましやかな女性であるように思う。が、当然のことではあるが実際にそうであるかは、まるで不明だ。そもそも――。
「香苗さん――そんな風に言うけれど、顔見知りになるのかは、まだわからないじゃない」
「えっ、お義姉さん――それは、どういう意味なのですか?」
意外そうにして香苗さんが視線を向けたのは、真向いの席に座る『義姉』だった。