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ホントの唄(仮題)
第12章 高崎家の人々
「皆さんのご心配には及びませんよ。確かに故あって、今は職に就いてはいない。が、俺は別に仕事を世話してもらうつもりも、高崎の籍に戻るつもりもありませんから。そんな訳で、増してや――将来巻き起こるかもしれない、骨肉の遺産相続争いにあっても、先に不参加を表明しておきますよ」
やれやれ、全く面倒な連中だよ。いい加減に辟易しする俺を、更に呆れさせたのは初対面となる彼女だった。
「あの、申し訳ありませんが――今のお言葉、もう一度、お願いできますでしょうか?」
「は?」
「一応、言質を取らせていただこうかと」
そう言った香苗さんは、俺に向かってスマホを構えている。どうやら俺の発言を証拠として、動画に残そうとしているらしいのだが……。
「オイ……拓実。ちゃっかり者のお前にお似合いな、良い嫁をもらったよな……」
「いやぁ、それほどでも」
まんざらでもない様子の拓実に、俺は腹の底では思いっきりツッコむのだ。
百パー、皮肉だよ!