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ホントの唄(仮題)
第13章 別れは劇的ならずとも
続いて俺を追って来たのは、意外なことに兄貴である。高崎喜市は心底、迷惑そうに顔をしかめながら、俺に話しかけた。
「オイ、待て。お前、本当に仕事はどうするつもりだ?」
「いや……まだ別に、考えてもない」
そう答えた俺を見て、兄貴は更にこれでもかと顔を歪める。そして舌打ちをしつつ、実に仕方ないといった感じで、こう話した。
「現場の一作業員としてなら、世話をしてやらないこともないぞ」
だが――
「断る」
「なっ、お前……人がせっかく」
俺が即座に断ると、兄貴は顔を真っ赤にしている。
まあ、兄貴なりに歩み寄ってくれた、のだとは思う。が、やはりそれは――
「兄貴、余計なお世話」
――なのだ。
笑ってそう返した俺を、まじまじと兄貴は見返し。
「だったら、少しはしっかりしろ。この、バカ次男が」
呆れたようにそう吐き捨てると、踵を返した。