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ホントの唄(仮題)
第13章 別れは劇的ならずとも
その兄貴と入れ替わるようにして、今度は弟の拓実が呼び止めて来る。
「ねえ、兄さん! 本当に帰っちゃうの?」
「そう言っただろ。拓実、今回は色々と世話になったな」
「それはいいけど。結局、その甲斐はあったのかい? なんか今一つ、釈然とはしないのだけど……」
「さあ、俺もよくわからん。が、少なくとも――気分は幾分、スッキリしてる」
「まあ、ね。喧嘩されるより、ずっとマシなのは確かだ。それは、それとして――」
拓実はそう言いながら、ふと俺の隣りを見やった。
「なんか、その娘――微妙に見覚えがあるような、気もするんだけど……」
ギクリ!
「ま、まあ、そういうことだから。縁があれば、また何れ!」
「あ、ちょっと!」
怪しむ拓実を残し、俺はそそくさと真を連れ、その場を後にして行く――。