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ホントの唄(仮題)
第13章 別れは劇的ならずとも
「さて、と――じゃあ、どうするかねー?」
交差点で赤信号に停車。俺は助手席に座る、その機嫌の在り処を量り兼ねながら、そんな問いを無作為に宙に投げ出している。
すると、ややあってから。
「とりあえず、アパートに行くから」
真は顔を外に向けたまま、そう言った。
「いや、だが……」
と、俺は戸惑いを浮べるのだが。
「服とか、置いてあるし」
「あ、ああ……そうか?」
「うん……」
「……おっと!」
またプイと黙った横顔を眺めつつ、一瞬だけ遅れて気づいた青信号に、車を発車。二人の意図が交差するようで、してない微妙な空気が車内に留まる。
出会った時、着の身着のままで何ひとつ持たぬ真ではあったが。確かに当初に身に着けていた服は、アパートの部屋に残してあった。
本音を言えば、真を連れ再びあの部屋に戻ることは避けたいと感じる。決心が鈍る。後ろ髪を引かれる。そんな恐れが、確実にあった。
だが、これは二人の間で明確に交わされた約束ではない。俺の一方的に用いたシナリオに、真が従う必要はなかった。
さて、しっかりしてくれよ、俺。ちゃんと追い出してやらなければ、な……。
俺は自らに言い聞かせて、とりあえずはアパートへと向かう。