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ホントの唄(仮題)
第14章 エピローグ

「えっ……あの……俺、悪気はないんだけども……?」


 表情を強張らせながら、恐る恐る俺が訊ねると――


「――ほんのジョークです。少しは、涼しくなれたのでは?」


 中島さんは、いつものポーカーフェイス。まるでジョークを言っているとは感じさせないテンションで、そんな風に言った。


「あはは……お蔭様で……」


 今年の初めに事務員として採用した中島さんは、かなり個性的な女性である。

 年齢は三十くらい。髪は後ろで一つに束ねていて、服装の感じも総じて地味な印象。化粧気を感じさせない顔は、見様によっては可愛らしい童顔ともいえる(のかも)。

 しかしながら、常に世界(他者)を警戒するかのようなジトっとした目つきは、玉に傷という他はあるまい。独り暮らしらしいが、その私生活は未だ謎である。

 それでも仕事は真面目でテキパキとこなすし、基本的にその能力は高い。俺からすれば、その性格も含め、割と気に入ってないわけでもなかった。

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