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ホントの唄(仮題)
第14章 エピローグ
「親父――頼む。俺に出資してくれ」
俺はそう言って、親父に頭を下げていた。少し前なら、死んでもできなかったこと。否、今だってまるで抵抗がなかった訳ではない。
銀行から融資を受けた方が、その意味ではよっぽど気楽。だが、斎藤さんたちを迎えると決めた以上、俺の面子だけで無責任なことはできなかった。
それに加え、あの親父が無条件で金を出してくれる訳もなく。業績が上がらなければ、容赦なくちっぽけな会社は潰されてしまうことだろうし、そうなれば俺は大きな負債を追うことになる。
だが、それは俺として寧ろ望むところなのであり。親父とのそれまでを顧みた時に、そのくらい緊張感の漂う関係であることを、『上等』なんだって思うのだ。
当然、俺の申し出に首を縦に振ってくれたことに対して、感謝の気持ちがない筈はない。