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ホントの唄(仮題)
第14章 エピローグ
何気に、デスクの上のラジオをつけた時――。
『午後最初のリクエストは改名した後も大人気の、この女性アーティストの一曲――』
「――!」
偶然、その唄が耳に届いていた。
そうして聞き入ってしまった俺は、やや不用意。
そこに麦茶を持って現れた中島さんは、俺の顔を見るやビクリと後ずさりをしていた。
「しゃ、社長! なに、泣いてんすか?」
「え、いやいや……違うって!」
慌てて涙を拭いながらだから、言い訳にすらなるまい。
あれ以来、その意味ですっかりとツボ。あの曲を聞くだけで、まるでスイッチが入ったよう。四十男の涙腺の脆さを、どうか甘く見ないでもらいたいものだ。
すると、暫しして――
「ああ、この曲?」
中島さんも、同じくその音色に耳を傾けた。
「ん、知ってる?」
「ええ、もちろん。特に『真』になってからの楽曲は、私も好きですから」
「そっか……」
それを嬉しく感じた俺は、つい悪ノリしてしまうのだ。
「実は俺――彼女とは、こういう仲なんだ」
そう言いつつ俺は、中島さんに向かって自分の携帯を差し出す。