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ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
「それで。どうして、お前――」
「お前じゃない――真! せっかく教えてあげたんだから、ちゃんと名前で呼んでよ」
ちっ……人のことを「オジサン」呼ばわりしといて偉そうに……。
「じゃあ、その真さまは――なんだって、こんな田舎街に来たんだよ?」
「別にぃ、何処でもよかった。自分を取り巻く環境ってのが、急に嫌になってさあ……。とにかく、何処かに行ってしまいたかったの。しがらみから逃げられれば、それでよかったんだと思うわ」
「それで、身一つでライブを抜け出し。気がついた時には、見知らぬ公園で行き倒れって訳か? オイオイ、随分と無計画な話じゃないか」
「オジサンには、関係ないでしょ」
「……」
俺は思わず、この耳を疑った。あまりの言われように、逆に笑いが込み上げそうだ。というか、胸がムカムカしてさっき食った物が込み上げかねない。
昨夜の公園で、俺が声をかけなかったら、お前はどうしていた? 決して恩を傘に着せようという訳ではないが、「関係ない」は甚だ心外である。