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ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム

マイナス思考に陥る自分の性格を、これほど賛美したいと感じたことはない。冷静に考える時間があってよかった。真がシャワーを浴びてくれなかったら、取り返しのつかない過ちを犯していたかもしれない。
世間の扱いがどうあれ、俺にとって彼女は只の見知らぬ若い女である。出会ったことに何ら感慨を覚えるでもなければ、逆に迷惑をかけられ困っている立場だ。
つまり俺にとってはこの状況は、デメリットに尽きる。先に示した最悪の事態も、決して大げさではないだろう。
そうなれば問題は、如何に真を説得するのか。あの様な性格をしている。熟慮に欠け突飛な行動に出たのものの、きっと彼女だって本心では戸惑っている筈だ。
何とか得心させ、自分の場所に戻るよう導いてやるのが肝要。甚だ面倒ではあるが、ここまで関わってしまったのも、また事実なのである。
「さて――どう言って、聞かせようか」
「なんの話?」
その声に思わず肩を竦め、俺は背後を窺った。
「あ、棚のTシャツ――勝手に借りちゃったから」
「――!?」
身体からほんのりと湯気を立ち込めつつ――
ドクン――!
真のその姿は容赦なく、またしても中年の心臓に負担をかけてくれるのだった。

