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ホントの唄(仮題)
第2章 緊急モラトリアム
――プッ。
と、真は無言のまま、手元のリモコンでテレビを消す。
「あのな……とにかく」
その背中に、俺が声をかけようとした時だ。
振り向き立ち上がった真が――
「――なっ!?」
俺の身体へと――突然、抱きついてくる。
不意のその行為は、俺は驚かせ。
ピッタリと密着した胸の感触が、薄手の布を通じて妙に艶めかしかった。
真はしっかりと両腕を俺の首に絡めて、耳元でそっと囁く。
「お願い、今だけ。オジサンの側に、いさせて」
吐息のような言葉が耳を擽り、俺の心を揺るがせていた。
真は誰かに縋ろうとしている。だが、そう感じるからこそ、俺は言っておかねばならないと思う。
「どうして、俺なんだ? たまたま通りかかっただけの、単なるオッサンだぜ」
「けど……優しいよ」
そう言ってくれた真を前に――俺は深く、ため息。
そして――
「正直に言うけどな。俺の頭の中は、今だってスケベ心で一杯だ。只、それ以上に臆病だから、ひたすら困惑してるだけに過ぎない。俺の優しさの正体なんて、そんな程度。いや……そんなもの、優しさですらない……」
自らの心情を、吐露していた。