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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で

 硬直したように、動きを止めたままの真。

 無遠慮に伸びゆく男の手は、もう真に触れる寸前だった。


「――悪いが、」


 何とか其処に駆け付けた俺は、その間に割って入ると右腕で真の肩を抱き寄せている。

 驚き仰いだ真の顔が、ホッとして見えたのが印象的だ。

 その顔を見せぬように身体の角度を変え、俺は男に言う。


「俺のツレなんだよ。ちょっかいを出すのは、遠慮してもらいたいね」


「あっ、え? だ、だけど……」


 男は取り乱してはいたが、どうやら簡単には引き下がってはくれないらしい。


「そ、その子……天野ふらのに似てたから」


 その名を耳にして、俺はふっとため息を吐く。それから――


「人違いだよ」


 と言い残すと、真を連れその場を足早に去って行った。


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