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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で

食事後――。
俺は缶ビールを傾けつつ、テレビにてプロ野球観戦。野球好きの中年にとって、それは至福の時間である――筈、なのだが……。
同じくビールでグビグビと喉を鳴らし、俺の隣りにてそれを見つめた真によって、その興は激しく損なわれていた。
「オジサンが応援してるのって、どっち?」
「無駄に派手なユニホームのチームだ……」
「ふーん。10対0の――ゼロの方だよね」
「まあ……な」
「あ、でも。まだ逆転できるんでしょ? 大きなホームラン打てば、一気に20点くらい取れたりとか」
「野球ってのはな……そんな大味なスポーツじゃねえから」
今時の「プロ野球とか、オジサンくさいよねー」とか言いそうなそこらの若い女たちよろしく、どうやら真もその御多分に漏れるものではないようだ。
まあ、それならそれで、大人しくしててくれればいいものを……。
「あ、また打たれたね。今日はもう、負けなんでしょ。まだ観てる価値なんて、あるのかしら?」
「こ、この試合だけじゃねーし。長いシーズンを通してだな。最終的に優勝すれば、それで……」
「へえ、じゃあ。今日はたまたま負けてるけど、普段は強いってこと?」
「目下、七連敗中……最下位を独走中だ」
「それって、ダメダメじゃん」
ケタケタと笑った真が、俺の繊細な神経を逆撫でした。
「うるせえな! お前は、さっさと風呂でも入ってろよっ!」

