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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で

「あーあ……っと」


 湯船に肩まで浸かると、俺は歳に見合ったそんな声を発している。


 流石に、まだ寝てはくれないかな……。


 何となく見えない部屋の方向を向くと、俺はやや頭を悩ませていた。


 夜、部屋に二人きりの男女。俺が風呂に逃げ込んでいた理由は、概ねそんな処に集約されようか……。

 ともかく、妙な展開になるのは避けたかった。昨夜と今朝の反省を踏まえ、俺はそう願わずにはいられないのである。

 とにかく真は、俺に対しての警戒心が皆無。というより、寧ろ積極的にその様な関係を欲してすらいるようで――否、そこは彼女なりの『恩返し』の形らしいが……。

 何れにせよ、俺がそこにつけ込むのは大変よろしくない。仮にも一緒に暮らすことを許した、そこが大人の男としての責務の一線であるように思われた。

 俺にも真にも、互いへの恋愛感情はないのである。少なくとも、今は――おそらくは、この先も。

 ならば一時の劣情に身を委ねては、駄目なのだ。そうなってしまえば、生活が次第に爛れゆくのは必定。

 俺の男の部分が、きっと真の笑顔を蝕んでしまう。それだけは嫌だと、俺は思った。


「考えすぎか……?」


 苦笑し、呟く。


 既に無害であることは、示せている筈。だったら真だって、好き好んで俺なんかと……。幾分自虐的に構えれば、少しは気が楽に思う。


 しかし、それも束の間――風呂を出た俺を、部屋で迎えた真は……。

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