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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で

「だ、駄目だ……」


 ゆっくりと迫る唇に――俺は言うが。


「でも――嫌とは言わないんだ。だったら――」


「――!?」


 その時、膝の辺りにゾクリとした感覚が奔った。


 そこに置かれたのは、真の右手。柔らかく撫ぜるように触れると、俄かに蠢く。

 それはやがて、スッと太腿を滑り。急ぐでもなかったが着実に、俺の股間へと達していた。

 ジャージの生地は、あまりにも無防備。顕わと鳴った俺の形を、真のしなやかな手の指先が弄っていた。


 その高鳴りを十分に確かめると――真は言う。


「フフ、ホント――ビンビン、だね」


 今朝の俺の言葉を受け、小悪魔の様な顔が囁いていた。


 風呂上がりの女の香りが、一気に鼻腔へと流れ込んでくる。それが俺の正常な判断を、鈍らせてゆくのだ。


 否、正常とは何を差して言うのだろう。ここで抗うとすれば、それは真が言うように不自然……?


 葉っぱの上に溜まった雨梅雨が、ポタリと地表に堕ちるように。このまま真の魅力に、屈してしまえば、それで……。


「…………」


 センチからミリに単位を移し、接近する真の唇を前にして――俺は?

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