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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で

「さ――酒」
「は?」
俺が苦し紛れに絞り出したワードに、真は虚を突かれキョトンとした顔。
「そ、そうだ……酒でも飲もうぜ」
「……」
幾分、呆れた雰囲気の真の視線を、何とか受け流しつつ。俺は一旦キッチンに立つと、酒とグラスそれに氷を用意して真の元に戻った。
すると、真は実に不満げな横顔で、こんな風に漏らしている。
「据え膳食わぬは、何とやら……とか言うじゃん。私……流石にちょっと、傷ついたからね」
その拗ねた様子も、また何とも可愛くはあった。が、真には悪いくとも、さっきまでの女の色香が鳴りを潜めたことに、俺は心底ホッとするのだ。
「まあ、気にしないでくれ。俺が度を超えて、臆病者だってだけだ。ビビってるんだよ」
「それって――何に、対して?」
「さあ……だから、とりあえず。哀れで無能な男は、酒の力を借りる」
「酔わないと、私を抱けないから?」
「かも、な」
そう言った俺の顔を仰ぎ、真はようやく顔を綻ばせる。
「プッ、フフフ……ホント情けない、オジサンだ」
「そう言ってくれるなよ。焼酎しかないが、いいか?」
「はいはい……仕方ないから、付き合ってあげる」
と、結局はその場を誤魔化すようにして、俺は真を相手に酒を飲むのだった。

