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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で
おそるおそると、真をベッドの上に運んだ。紅く火照ったその顔も魅力的に映る。だが、懸命に睡魔の虜となった姿は最早、俺に微笑ましさだけを覚えさせた。
その顔を見つめ、酒に酔ったままに俺は告げる。
「やはり……俺は、嫌……みたいだ」
もちろんその意は、真を抱くことその行為自体が、ということではない。
そうすることで、真に夢中になる自分が嫌だ。後に失うものを、手に入れたと錯覚する――そんな自分が嫌だった。
今はさ迷ってはいても、真は何れ夢の彼方の住人へと帰す。四十年の己の人生に於いて幾多の挫折を余儀なくされた俺は、彼女の放つ眩い光ばかりのにこの身を焦がされるのことを――
――結局は、恐れたのだ。