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ホントの唄(仮題)
第3章 異常な日常の場面で
ヤバい……完全に酔ってる、だろ。
酒に酔い、自分に酔う。些かこの状況を大袈裟に考えているのだと気づき、俺はそんな自分を戒めていた。
「俺も、寝るか……」
そうしてしまうことは、床にこの身を倒すだけの簡単な作業である。
しかし――俺はふとパソコンに視線を止めると、何気なくそれを開いた。
「……」
とりあえず、ネットに接続。そして、おぼつかない指先で、検索ワードを打ち込む。
『天野ふらの』
次いで『失踪』『曲』『画像』等々の第二検索ワードより、『曲』を選びそれをクリックした。それに伴い画面に表示されたサイトの表題を眺め、俺は呆然とその一つを読み上げた。
「天野ふらの……切ない恋愛ソングを奏でる……その素顔の魅力」
デビューから三年余り。自身の楽曲のほとんどの作詞を手掛ける。最近ではアルバム数曲の作曲にも携わり、更にそのアーティスト性を揺ぎないものにしつつある。同年代の女性の多くの共感を呼ぶと、恋愛のカリスマとしての境地を切り開いてゆく――。
そんな情報をざっと眺め、俺は動画に上がってたライブ映像の一部を再生した。
「……」
天野ふらの――その唄を耳にするのは、それが初めてである。俺の様な中年の目から見ても、その姿も楽曲も確かに魅力的なものと認めることに対し、些かも吝かではなかった。
だが――
「ニセモノの唄……か」
俺はある違和感と共に、真の口にした言葉を繰り返している。