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第6章 寝物語【陽炎】
「おはよ、父ちゃん」

五歳になった娘のサヨは、るいによく似た闊達な子で、今では朝起きると母のるいを手伝って鷺の身の回りの支度を整える。

今も目の見えない鷺のために、手水代わりに搾った手拭いを持ってきたところだ。

「おぅ、ありがとな」

手拭いを受け取り、顔を拭いたら、朝餉の支度を終えたるいがやってきて髭をあたってくれる。
盲た身では、流石に刃物は扱えないからだ。

「豆腐と納豆買ってくるね!」

ザルと鉢を持ち、るいから小銭を受け取ると、草履をつっかけて元気よく表に飛び出していった。

「元気だなぁ、あの子は。」

「最近じゃ途中まで店の給仕もすんのよ。私も火のそば離れずに済むから助かるわ」

鷺は、着ようとした着物の袂から何かを出した。
白い三角が二つ、紐で連なっている。

「何それ」

「猫の耳」
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