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another storys
第11章 約束【陽炎】
市八は鷺のその言葉を、素直に嬉しく感じた。

「サヨを泣かしたら承知しねぇぞ」

鼻をすする鷺に、市八が微笑む。

「約束します。大事にするから、サヨを俺に下さい。」

「持ってけ泥棒!」

鷺が笑って市八に拳骨をくれる。

「サヨに、お前の全部掛けんだぞ。てめぇの全部掛けてもいいってオンナと出会えたら、そりゃ最高の人生だ。お前の父ちゃんも、俺も、出会えたオンナに全部掛けられた幸せモンだ。だから、お前も、サヨも。そうなってくれよ…」

「はい…おじさん…いえ、おとっつぁん!」

「まだ早ぇ!一丁前ンなってから呼べ!」

再び拳骨をくれて、市八は痛!と首を竦める。

親の許しを得た市八は、薮入りの度にサヨとの逢瀬を重ねるが、サヨが孕むことはなく、番頭になった市八はサヨと細やかな祝言を挙げ、店の近くに長屋を借りて、二人で暮らし始めた。

市八が駒込の支店を任される、三年前の話だ…



ー了ー





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