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第14章 蝶の見る夢【陽炎】
どのくらい経ったのか、何やら下が騒がしい、と思ってつと階の下を見やると、遣り手と牛太が何やら揉めている。

「冗談じゃないよ、花魁に一見なんか目合わせるもんか!楼主(おやじ)さまに通す話でもあるまいよ!」

「それが、辰のハナシじゃ、銭箱積み上げてコレを運べ、コレで遊べるだけ遊んでやるンだと、とてもひとりじゃ運べねぇ嵩で、戻ってきたんで、今貞吉が馬で一緒に行ったってンです」

「馬で…?」

遣り手の顔色が変わった。

「中身は両判ばっかしじゃねぇみてぇですが、それにしたってすげェ嵩だッて…それも、初見じゃねぇ、一回藤浪楼で遊んだこともある、市九郎ッてヒトの知り合いだッて言い張ってて…」

「市九郎だって?」

「ご存知ですか?」

「あぁ、ウチの附廻の馴染みで結構な上客だったけどねぇ….もう一年程もご無沙汰だけど…」

その男が、桜の想い人なのだろうか。
その知り合いが、遊びに来ている…

見てみたいー

素直に思った。

「止めなんし!」

常磐は二階から、二人に声を掛けた。

(牛太→妓楼の男性従業員。妓夫(ぎゆう)とも。)
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