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another storys
第14章 蝶の見る夢【陽炎】
女郎と客との間には、必ず金が介在する。
「この吉原で…一夜の夢を売るのがわっちらの仕事。外には出られぬ身であれば、想いが実ることもありんせん。男に惚れるは莫迦というもの…それでも。この心とやらいうものは…どうにも思い通りになりんせんなぁ…」
桜の涙が。
今なら理解できた。
鷺の帰る刻限が来た。
着物を整え、常磐の頭を抱いて名残惜しい素振りを見せる鷺に甘える。
「モシヘわちきァ たったひとつねがいがござんすよ」
「何だい」
「おさらばとは、言わずにおくんなんし。また来るよと、ただ一言…後生でありんす…」
常磐の目から涙が伝う。
鷺はその涙をつ、と舐め取り。
「解った。また、来るよ。常磐。」
子供のような笑顔で微笑み、鷺は去って行った。
常磐の心に鮮烈な恋を刻んで…
「この吉原で…一夜の夢を売るのがわっちらの仕事。外には出られぬ身であれば、想いが実ることもありんせん。男に惚れるは莫迦というもの…それでも。この心とやらいうものは…どうにも思い通りになりんせんなぁ…」
桜の涙が。
今なら理解できた。
鷺の帰る刻限が来た。
着物を整え、常磐の頭を抱いて名残惜しい素振りを見せる鷺に甘える。
「モシヘわちきァ たったひとつねがいがござんすよ」
「何だい」
「おさらばとは、言わずにおくんなんし。また来るよと、ただ一言…後生でありんす…」
常磐の目から涙が伝う。
鷺はその涙をつ、と舐め取り。
「解った。また、来るよ。常磐。」
子供のような笑顔で微笑み、鷺は去って行った。
常磐の心に鮮烈な恋を刻んで…