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第18章 彼岸花【陽炎】
「るい! 俺と所帯を持とう! 俺の嫁になってくれ‼︎」

「信吉さん…いいの? 私で…」

ずっと憧れていた火消しの信吉に、嫁に来てくれと申し込まれたのは、るいが十九の時だった。

信吉は、いろは四十八組からなる江戸の町火消しうち、ろ組の纏持ちだ。

纏持ちというのは、火事場の風下の屋根の上にあがり、組の旗印でもある纏を振りたてて、消火活動の目印とするとともに、仲間たちの士気を鼓舞する役目のことを言う。
足場の悪い屋根の上で、重い纏を振り回すのはなかなかに難しく、火消しの中でも花形で、組のうちで体力、威勢ともに優れたものがなる。

火事と喧嘩は江戸の華、と言われるくらいで、火事があると皆見物にいったものだ。

その二番組の纏持ちといえば、文句のつけようもない、十分すぎる縁だった。


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