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another storys
第18章 彼岸花【陽炎】

るいが復帰して、しばらくは女将と二人で店を切り盛りし、二人で住んだが、女将は数ヶ月で言葉通り、息子の元に行くことになった。
女将は家の中のものも、店のものも、すべてるいに譲り渡し、これからも繁盛させて行ってな、と肩を叩いて出て行った。
るいは泣きながら女将との別れを惜しんだ。
「泣くんじゃないよ、今生の別れでもあるまいに。いつでも会えるよ、会いに来てな!私も時々孫連れて覗きに来るからさ!」
女将は笑って手を振った。
そうして、るいが新しい店の顔になる。
最初は痘痕を好奇の目で見られたり、哀れまれるのが嫌できっちりと白粉を塗っていたが、火の傍で汗をかくと流れてしまうので、そのうち塗らなくなった。
店の名前が『おにしめや』で、江戸っ子の好きな洒落書きで、看板に鬼の絵と〆、と書かれていたから、鬼みたいな痘痕面の女がやってる店だ、と評判になった。
『鬼婆は何処だ』とひやかされる度に、『五月蝿い、黙りな!私の事を鬼婆なんて言う奴からは倍額取るよ!』と吹っかけると、『そらみろ、やっぱり鬼婆じゃねぇか』とまた笑いが起こる。
客の前でなら何を言われても笑っていられた。
女将は家の中のものも、店のものも、すべてるいに譲り渡し、これからも繁盛させて行ってな、と肩を叩いて出て行った。
るいは泣きながら女将との別れを惜しんだ。
「泣くんじゃないよ、今生の別れでもあるまいに。いつでも会えるよ、会いに来てな!私も時々孫連れて覗きに来るからさ!」
女将は笑って手を振った。
そうして、るいが新しい店の顔になる。
最初は痘痕を好奇の目で見られたり、哀れまれるのが嫌できっちりと白粉を塗っていたが、火の傍で汗をかくと流れてしまうので、そのうち塗らなくなった。
店の名前が『おにしめや』で、江戸っ子の好きな洒落書きで、看板に鬼の絵と〆、と書かれていたから、鬼みたいな痘痕面の女がやってる店だ、と評判になった。
『鬼婆は何処だ』とひやかされる度に、『五月蝿い、黙りな!私の事を鬼婆なんて言う奴からは倍額取るよ!』と吹っかけると、『そらみろ、やっぱり鬼婆じゃねぇか』とまた笑いが起こる。
客の前でなら何を言われても笑っていられた。

