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another storys
第18章 彼岸花【陽炎】
翌日、鷺は朝餉の後、小銭をくれと言い出した。
籠を使いたいなど、何処に行くのか、と聞いてもはっきりとは教えてくれなかった。
もう二度と、帰ってこないんじゃ…

また、捨てられるの…?

切なさに唇を噛み締めながら、鷺を信じたい気持ちと、拒んだら逃げられるのかも知れない、という不安から小銭を渡した。

その日の仕事は、上の空で手に付かなかった。


夜。
るいが店を閉めて家に帰っても、鷺が帰ってくる気配はなく。
るいは半纏を着込んで外で待つ。
鷺と会った日…

店の外で震えながら鷺は私が店から出てくるのを待ってた。反対になった…

ふふ、と軽く笑った時、ざりざりと、土を引っ掻く杖の音に、顔を振り上げる。

「鷺‼︎」

抱きついたら鷺はちょっとよろめいたけど、しっかりと抱きとめてくれた。

はい、と、肩に背負った風呂敷包みをるいに渡してきたが、あまりの重さに思わずよろめく。
中には、一貫文の銭が四本入っていた。

「どうしたの?このお金」

びっくりして鷺を見ると鷺は軽く笑う。

「当面の生活費。心配しなくても、昔の仲間と、ちょっと賭場で遊んだだけだよ。もう行かないから大丈夫。」

なんか危ない事したんじゃないわよね…はぁっと息を吐いて鷺の胸をひとつ拳で叩いた。

「本当に、何処にも行かない?」

鷺はにっこりと笑って。

「うん。出て行けって言われたって居座ってやるから覚悟しな?」

そう言ってるいの頭をぐっと抱き寄せた。



ー了ー





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