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another storys
第21章 父とオトコの境界線【社内恋愛のススメ】
月イチの検診で1~2枚ずつエコー写真が増えていく。
最初、妊娠したと聞いた時はピーナッツみたいだったその突起は、翌月には目玉らしき形が見えてちっこい宇宙人みたいになり。
小さな手が見え、うずくまってる赤ん坊の形になり…徐々に大きくなっていく。
でも男か女かなんてのははっきり明言はされなくて。
2人でどっちだろうな、って話はしても、どっちがいいとは言わなかった。
どっちでもいい…っていうと興味ないように聞こえるけど、そうじゃなくて、どっちでも元気に生まれてくれればいいかな、って思ってる。
まぁ、思春期になった娘と男親のビミョーな空気感を、姉貴と親父というサンプルで見てる身としては、男のが分かりやすいんじゃないか、と思ってしまったりはするけど…
息子と女親もイロイロあるかもだしな。俺は反抗期って言うほどの反抗期がなかったタチだから、その辺よく分からん。強いて言うなら母親に接するのが照れ臭くなって、無愛想になったくらいかな。でも母親に怒鳴ったり、手をあげたり、そんな事もしたことない。家ではひたすら無口で無反応だった。
結局、軌道修正の仕方もわからんまま、無愛想な息子として大学を出て、就職して家を離れた。毎年盆正月にはウチに帰ってたけど、その時には普通に土産下げて帰ったり、話もしたし、買物に出掛けるお袋を乗せて車出したりもした。
働き出して5年で親父が脳梗塞で死んで、お袋が姉夫婦の家に同居したのを機に、長野には帰らなくなった。
この夏に、遙の妊娠を知らせに、墓参りを兼ねて行ったのが、ほぼ10年振りの帰省だった。

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