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第24章 かわいいひと【Cross roads】

隆行くんのスーツは、一目で安物と判る、って程ではないけれど、紳士服量販店のもの。若手のサラリーマンのお給料で、無理なく買えちゃう、そしてさほど見劣りしない、ごくごくありふれたライン。おそらく礼服を買うとしても、同じ感じになるんだろうな、と思った。

量販店の既製品が、それ程安っぽく見えないのは多分に姿勢とスタイルの良さが関係している、と私は思ってる。逆にどんなに高いブランド物でも、台無しにしちゃう人もいると思うし。

勿論、プレタポルテが悪いとは言わない。TPOもある。最近は量販店のモノも品質が良くなっているし、毎日着るんだから寧ろそれで十分。
だけど、やっぱりイイ生地の質感は、近くで見れば判るし、触れば全然違う。
だから、お呼ばれの席には一着イイものを持っていてもいいんじゃないかしら？と思ってしまって。

「作る？ お母さんに相談してみるけど!?」

と提案してみた。
ウチは両親が小さなテーラーで働いていて。
伯父が社長で父は専務、だけど実際は兄弟で共同経営みたいな感じ。二人とも縫製もするし営業もする。
母は結婚する前からパタンナーとして働いていて、そのまま独身だった父と結婚した、みたい。
採寸とパターンが主な担当だけど、縫製もできるから、サンプル品を作ったりはしている。