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another storys
第30章 思い出の味【社内恋愛のススメ・Cross roads】
「忘れたな。」

「帰って、翌朝になっちゃったけど、母と2人で食べたの、私は覚えてるわ。」

「そんなこともあったかな。」

誠治さんは照れくさそうに、明後日の方向を見ながらコーヒーを飲んだ。

「お互いの、初めてづくしね、今日は。」

「…思い出の味、ってトコかな。」

「いろんな初めてが、時間が経つと思い出になるのね…」

「きっとほとんど忘れちゃうんだろうけどな…たまに、思い出せたらいいな…」

「うん、こうやって、ね…」

ソファに隣り合って座り、誠治さんの肩に頭を預けて甘えてみた。
誠治さんがコーヒーカップを置いて、そっと私の頭を抱き寄せてくれる。

…幸せだな、って思えて。

隆行や、義隆さんにも、こんな時間を一緒に過ごせる人が居るんだろう、居て欲しいな、と心から思った。



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