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第4章 化猫奇譚【陽炎】
鷺は、兎の毛皮を使って、子供の手ほどの三角を二つ作っていた。
細工物屋に特別につくらせた、偽の猫の耳だった。
二つ並んで紐で繋がったそれをサチに着けろという。

「本当の耳はちゃんと髪で隠してね。で、この白い襦袢の腰から尻のあたりを血で汚して、乾かして着たら、化け猫の出来上がり。」

「化け猫…?私が…?」

サチはキョトンとしている。

「そ。夜やるんだ。暗闇ン中、明かりは提灯くらいだ。細かいトコなんてわかりゃしねぇ。猫ちゃんが右向いて、火傷の痕を少し見せて、にゃーおって鳴いたら餓鬼共小便漏らすんじゃないか?」

鷺は面白そうに笑う。兵衛も苦笑した。

「そんなに上手くいくかしら…」

「いや、幽霊の正体見たり枯れ尾花と言うじゃないか。怖いと思って見れば何でも怖いものだ。サチ殿の化け猫、迫力はあると思うぞ?」

兵衛も想像したのかニヤニヤ笑った。
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