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淫徳のスゝメ
第3章 私が最も華やいだ頃のこと
まづるさんと過ごすようになってからだ。
偶然同じ学科で会って、私を不登校から引きずり出したまづるさん。
彼女の隣に憧れて、同じ空気に憧れた。私は私を知らない学友達、また、高校時分まで私に傅いていた学友達にも分け隔てなく接して、ありきたりな少女のように振る舞うようになっていた。
無名の家系、成金に、思い上がった少しばかりの裕福層。生のどこに可能性を見出せるのか、理解しかねる庶民達。
私にとって、彼女ら同世代の少女達は、とるにたりない生き物だった。裸体になって、初めて若干の役に立つ。
「昨日の家族ごっこは、いただけなかったわ」
「姫猫さんも?なんだ、私ばかりなじられて、二人とも意見一致だったんだね」
「ううん、……」
私は、首を左右に振った。
年長の男が絶対君主の家庭。そこでの女は、さしずめ美しい楽器に過ぎない。子供達は彼らの思想を吹き込まれて、彼らの理想に改竄される。失敗作は、懲罰を受ける。
父親が正しいからだ。風刺の対象になるまでもなく、彼こそ自然を知悉している正当だからだ。
「お父様を、あんな風に揶揄すべきではないわ。それに私は、あの姉役の子のように、反抗的な態度もとらなかったし……」
長女は、正しい父親に従う。母親よりも、妹よりも、長男よりも。誰よりも父親を深く愛して、生涯彼を信仰する。…………
「あんなに酷く叱られるなら、愚かな持論ばかりを語るお母様か、陰気で頭の弱いきよらだったわ……」
私の唇が塞がれていた。
幻のように甘く柔らかな、まづるさんの唇だ。