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《愛撫の先に…》
第8章 《レッスン―――…》

……
マンションに帰ってきた。
久々ね、日曜日以来?
あの時はまだ失恋よりも片思いだったね…

シャワーを済ませた菜々美は髪を乾かしシュシュを手にため息をつく。
『幼稚なあんた…
他の女に言う言葉は出任せ…』

結城ロスになりそう…
胸の疼きだってこんなに…
19時半を過ぎたあたりから着信は結城と陽子、
出ないとメールに変わり夕食がわりのココアを飲みながら見ていた。

『昨夜出来なかったレッスンを?
今結城さんの顔を見たらあたし泣いちゃいそうだから…』

『陽子…
舞い上がり過ぎて浮かれてたのよね、
レッスンで愛される事なんてないもの…』

陽子にだけは返事を打ち始めたがチャイムを鳴らす音に打つ手も止まる。

インターホンに映るのは結城!
『帰って!』
『レッスンはどうなる!?スイートタイムに帰らないから心配していたのに君は!』

結城さん…
今の言葉を寂しくなったら心の中でリピートしていいですか?

『帰って…』
『声が震えてる、
様子がおかしい君を放って帰れると思うのですか!?開けて下さい、
俺が風邪をひいても構わないなら無視するがいい』

風邪をひいても構わないなら?
まさか一晩中ドアの前にいる気なの?

『結城さん!』
ドアを開ける菜々美。
『泣いていましたか?』
風にふかれ乱れた髪に不機嫌な顔の結城にもときめく菜々美。

『泣いてなんか…』
『もういい…』

玄関で抱きしめられて…――
ベッドで部屋着を脱がされて…――

ベッドが軋みお互いを呼ぶ名前が愛撫の途中にささやかれ…――

ひとつの布団に抱きしめられて眠る…――

“結城さん側にいて”
“菜々美高瀬よりも俺を見て”

切ない思いが交差する…


次の日、7時。
リビングに置かれたメモを見て夢ではなかったと胸元のキスマークをなぞった。
《寝ている君を起こしたくなかったからメモにした。
悩み事があるなら相談してほしい。
結城啓輔》

結城さん…
悩み事を言うとあなたは困るのでしょ?

結城さん…
堪らない!
失恋に効く予言を下さい…
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