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危険な香りに誘われて
第1章 微光
自然が多く残る田舎町が、同じ大阪とは、信じられない。
賢也は、一刻も早くこの退屈な風景から抜け出して、元いた世界へ帰りたいと思っていた。欠伸を噛み殺し、アクセルを強く踏む。

雲行きが怪しい。
さっきまで明るかった空が、あっと言う間に黒い雲に覆われ稲光を放つ。
ゴロゴロと雷音まで響かせて。

ポツリ、ポツリ。フロントガラスに雨粒が落ちてきたかと思ったら、ザーッと激しい音を立て、視界を塞ぐような豪雨にみまわれた。

スピードを落とそうとした矢先、道路を横切ろうとするイタチに驚いて、急ブレーキを踏んでしまった。
判断ミスだ。
雨の中、スピードを出した車が、急ブレーキを踏めば、どうなるか知らなかった訳じゃない。
スリップ!
賢也は、ハンドルを握る手に力を入れた。

車体は、恐ろしいスピードで回転し、大木にドンッと激しく体当たりして、停止した。


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