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危険な香りに誘われて
第1章 微光
最悪の状況としか言いようがない。

事故から一時間経過したというのに、まだ一台の車も通らない。
怪我さえしていなければ、電波の届くところまで歩いて行くのに・・・・。
役に立たない携帯を睨みつける。

大木にぶつかった衝撃で、膝を強打した。
時間が経つにつれ、痺れと痛みが増す。
体も怠い。
間違いなく、折れている。

ただひたすら待つだけ。
5分が、1時間にも思え、車の中で半日過ごした気分だ。
苛立ちが募る。
誰でもいいから、見つけてくれと呟いた。


目を閉じ、痛みに耐えていると。


コンコン。
コンコン。

窓をノックする音に、ハッとした。


誰かが、様子を伺っている。
お迎えか?
そうか、天使かも。
天使って、結構可愛い顔しているんだな。
ちくしょう、死ぬんなら、一発やらせろよ。
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