パソコンから！ケータイから！スマホから！無料でどこでも気軽に楽しめる官能小説サイト

第1章 微光

女の実家は、山の麓にあった。父親は、役所に勤めている兼業農家。田舎が嫌で一人暮らしを始めたと女が笑いながら言う。

どうでもいい情報だ。

女は、ふいに、畑や田んぼの先に見える古い木造の家を指差した。

「あれよ。ね、嫌になるくらい田舎でしょう」

確かにな。

「気が向いたら連絡して。待っているから」

「ああ、わかった」

「セフレでもいいの。本当に待っているから電話して」

賢也は、顎で家の方を指した。早く降りろと言う目。賢也とは、もう二度と会えない。この男が、決して自分に連絡してくることはないと女は、悟ってドアに手を掛けた。

「送ってくれて、ありがとう」

礼を言って降りると、女は、勝手口のドアを開けた。犬のクンクンと甘えるような鳴き声が聞こえる。
賢也が、車を発進させると、女が慌てて門の外へ飛び出してきた。
ミラーに映る女の姿を見て、うんざりした賢也は、ポケットに突っ込んでいたメモを握り潰し窓から捨てた。