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危険な香りに誘われて
第6章 男の嘘
賢也は、真紀の腕を掴んだままスタスタと歩いて、車の前に行き、助手席のドアを開けた。

「乗れよ」

「嫌だ。他の女を乗せた車には、乗らない」

真紀は、プイッと顔を背けた。

「だから塾の講師だって」

まだ嘘をつこうとするか?
なんかで聞いたことがある。
男は、浮気現場を押さえられても「最後までやってない」って見え見えの嘘をつくって。
賢也も、そうなの?
目の前で、あの子を乗せたのを見たって言っても「知らない」とか「講師だ」って嘘をつきとおすのかな。昨夜、繋がったのは、体だけだったの?

「加賀美香」

「えっ」

「車に乗せてどこに行ったの」

賢也は、真紀から手を離した。何で、その名前を知っているんだ。まさか、昨夜、あそこにいたのか。賢也は、額を押さえた。

「ここまで言っても、まだ嘘つくつもり?何も知らないと思ってんの?公衆電話から電話掛けさせるなんて、随分手の込んだ真似するんだね。全部わかってんだよ?」

賢也は、固まっている。
浮気現場を押えられた男は、皆、こうなるんだろうか。
頭の中で、次の言い訳を考えているのかな。

「賢也、最低。嘘つき」

賢也を残して真紀は、走ってマンションの部屋へ戻った。


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