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危険な香りに誘われて
第8章 危険な虎
「お前、俺に何か言うこと無いか」
エレベーターの中で、腕組した賢也がボソッと聞いた。
「えっ、何」
「もっかい聞く。俺に話すことあんだろ」
「何を」
「だったら、いいわ。帰んぞ」
「えっ、賢也」
エレベーターを降りて、賢也は、スタスタと歩いて行く。真紀は、小走りで追いかけた。
「待ってよ、賢也。早い」
賢也のシャツを掴み、引っ張って立ち止まらせた。はぁはぁと乱れた息を整えようと胸を押える。
顔を上げると、賢也が、冷たい視線で自分を見下ろしていた。真紀は、驚いて息を飲んだ。相当怒っている。
「行くぞ」
クルリと背を向け、また歩き出す。賢也に、拒絶されたように思えて、泣きたくなった。
「待ってよ、賢也」
追いかけようと駆けだした時、自転車に乗った人にぶつかり、真紀は、コンクリートに尻もちをついた。
「どこ見て歩いてんだよっ。あぶねぇだろうがっ。このチャリ高いんだぞっ。曲がってたら弁償してもらうからなっ」
「ご、ごめんなさい。でも、ここ自転車禁止・・・」
ガシャンッ。突然、自転車の若者が自転車ごとひっくり返った。
「うあっ」
自転車の立管に賢也の足が乗っている。自転車の下敷きになった状態の若者の左足を靴底で強く踏みつけた。
「ぎゃぁっ、痛ぇっ。痛ぇっ」
大声で、のたうち回る若者を中心にあっと言う間に人だかりが出来ていた。
「大丈夫か」
賢也は、手を伸ばし、真紀の腕を掴んで引きあげ、立たせると汚れたスカートの埃を払った。
「うん」
「警察に訴えてやるっ。自転車壊れたじゃねーかっ。10万もすんのにっ」
喚き散らす若者を無視して、賢也は、真紀の手を握ったまま歩き出した。
「いや、お兄ちゃんが悪いよ」
「女の子相手に、あんなこと言うから。そりゃ彼氏も怒るわ」
エレベーターの中で、腕組した賢也がボソッと聞いた。
「えっ、何」
「もっかい聞く。俺に話すことあんだろ」
「何を」
「だったら、いいわ。帰んぞ」
「えっ、賢也」
エレベーターを降りて、賢也は、スタスタと歩いて行く。真紀は、小走りで追いかけた。
「待ってよ、賢也。早い」
賢也のシャツを掴み、引っ張って立ち止まらせた。はぁはぁと乱れた息を整えようと胸を押える。
顔を上げると、賢也が、冷たい視線で自分を見下ろしていた。真紀は、驚いて息を飲んだ。相当怒っている。
「行くぞ」
クルリと背を向け、また歩き出す。賢也に、拒絶されたように思えて、泣きたくなった。
「待ってよ、賢也」
追いかけようと駆けだした時、自転車に乗った人にぶつかり、真紀は、コンクリートに尻もちをついた。
「どこ見て歩いてんだよっ。あぶねぇだろうがっ。このチャリ高いんだぞっ。曲がってたら弁償してもらうからなっ」
「ご、ごめんなさい。でも、ここ自転車禁止・・・」
ガシャンッ。突然、自転車の若者が自転車ごとひっくり返った。
「うあっ」
自転車の立管に賢也の足が乗っている。自転車の下敷きになった状態の若者の左足を靴底で強く踏みつけた。
「ぎゃぁっ、痛ぇっ。痛ぇっ」
大声で、のたうち回る若者を中心にあっと言う間に人だかりが出来ていた。
「大丈夫か」
賢也は、手を伸ばし、真紀の腕を掴んで引きあげ、立たせると汚れたスカートの埃を払った。
「うん」
「警察に訴えてやるっ。自転車壊れたじゃねーかっ。10万もすんのにっ」
喚き散らす若者を無視して、賢也は、真紀の手を握ったまま歩き出した。
「いや、お兄ちゃんが悪いよ」
「女の子相手に、あんなこと言うから。そりゃ彼氏も怒るわ」