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危険な香りに誘われて
第9章 虎と女帝
どこまで真紀に話をすればいいのか。
話さなくて済むなら、その方が良い。しかし、実家に連れて行かれ、あの女と会ったのに、何も言わないのも変だ。風呂上がり、ベッドで仰向けになって頭の下に腕を入れ、天井を見つめながら、考えていた。
ドアの開閉する音がして、賢也は、視線だけ向けた。
「変なことに巻き込んで、悪かったな」
「賢也こそ、大丈夫?」
ベッドがきしむ。
風呂上がりの真紀から香る甘い匂いが、鼻をくすぐる。手を伸ばし片腕で抱き寄せると、火照った頬に唇を押し当てた。
「あの女、親父の再婚相手」
「聞いてもいい?賢也の・・・・お母さんは・・・」
「5歳の時に俺を置いて出て行った」
5歳、甥っ子の雄介と同じ年だ。幼い子供が、母親を恋しく思わないはずが無い。突然出て行かれ、傷ついたはず。真紀は、言葉を詰まらせた。鼻がツンと痛くなる。
「別に同情しなくていいぞ。顔も覚えてないしな」
母親との間には、楽しい思い出など、何一つなかった。
たった一枚の写真も腹立だしさのあまり、破り捨ててしまった。
記憶に残っているのは、最後に見たあまりにも無残な姿。
話さなくて済むなら、その方が良い。しかし、実家に連れて行かれ、あの女と会ったのに、何も言わないのも変だ。風呂上がり、ベッドで仰向けになって頭の下に腕を入れ、天井を見つめながら、考えていた。
ドアの開閉する音がして、賢也は、視線だけ向けた。
「変なことに巻き込んで、悪かったな」
「賢也こそ、大丈夫?」
ベッドがきしむ。
風呂上がりの真紀から香る甘い匂いが、鼻をくすぐる。手を伸ばし片腕で抱き寄せると、火照った頬に唇を押し当てた。
「あの女、親父の再婚相手」
「聞いてもいい?賢也の・・・・お母さんは・・・」
「5歳の時に俺を置いて出て行った」
5歳、甥っ子の雄介と同じ年だ。幼い子供が、母親を恋しく思わないはずが無い。突然出て行かれ、傷ついたはず。真紀は、言葉を詰まらせた。鼻がツンと痛くなる。
「別に同情しなくていいぞ。顔も覚えてないしな」
母親との間には、楽しい思い出など、何一つなかった。
たった一枚の写真も腹立だしさのあまり、破り捨ててしまった。
記憶に残っているのは、最後に見たあまりにも無残な姿。