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危険な香りに誘われて
第10章 やっぱり虎
真紀が行きたいと言ったのは、隣の県にあるパンダのいるパークだった。海を見ながらのドライブ、賢也も新車スカイラインもご機嫌で、軽快な走りをみせた。
嬉しそうに運転する賢也を見て、真紀も自然と笑顔になる。

みかんと梅干が有名で、やたら車窓風景に登場する梅干しの看板を見て、真紀の口の中は、唾液が湧いた。

「帰りに梅干し買って帰ろうね」

賢也が、大きく口を開けて、笑い声をあげた。

「お前、食いもんばっかり見てねぇか」

からかうように言う。

「そんなことないよ」

「クエ鍋とか、うすかわ饅頭とか食いもんのことばっかり言ってるぞ。景色見てねぇだろ」

「見てるよ。賢也こそ、余所見運転して事故らないでよ」

「ははっ、昔みたいにか」

「事故ったことあるの?」

ドライブインで買ったペットボトルのお茶を口にしながら賢也に顔を向けた。

「・・・・大学の頃な。可愛い女の子が助けてくれた」

うっかり口が滑った。賢也は、自分の顎を撫でる。別に隠す必要もないのだが、気づいてないなら、それでいいと思っていた。ちゃんと話そうか。賢也が口を開こうとすると。

「あっそ」

断ち切るような言葉を耳にして、口を閉じた。
気を悪くしたらしい。
真紀の声のトーンが下がった。賢也は、笑いたくなるのを堪えた。

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