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危険な香りに誘われて
第10章 やっぱり虎
「あ、チーターいた」

草むらの中で、昼寝をしているチーターを見つけ、真紀は、はしゃぎ声をあげた。

「おっ、ホントだ。猫みたいだな」

窓の外を食い入るようにのぞいていると。

「陸上動物で最も走るのが速いのがチーターなんです。最高時速120キロで走るんですよ。すごいのは、走りだして、わずか3秒で最高時速に到達することです」

「へぇ」

ガイドスタッフの説明に耳を傾けつつ、普段見ることのない景色を二人は楽しんだ。

「ここから虎のエリアです」

「おお、すげえ。本物だ。でけぇな、どんくらいあんの?」

賢也が、興味深そうに聞くとガイドスタッフから笑顔が返ってきた。

「体重は、オスで、およそ150キロほどです。前足が大きいでしょう。草食動物は、一撃で倒されてしまいます。お客さんたちも気をつけてくださいね」

「へぇ。猫のデカいやつにしか見えねぇけど、危険なんだな」

「賢也とどっちが強いかな」

「あほか。虎に決まってんだろ」

およそ一時間弱のコース。ツアーを満喫した二人は、のんびりと園内を見て回った。

「楽しかったね。また来ようね」

「何度も来てんだろ」

「いいの。何度きても、ここは、楽しいから。賢也が嫌なら、他の誰か」

賢也が、真紀の首に腕を回し、軽く絞める振りをする。

「ぐえっ」

「行かねぇとは、言ってねぇだろ」

「あーっ、賢也。アレ、乗ろう」

真紀は、ゴンドラが、ゆっくりと回転する乗り物を指差した。賢也は、サングラス越しに目を凝らした。

「観覧車」

「乗ろう、行こうよ、賢也」


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