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危険な香りに誘われて
第11章 夜空に咲く花の下で
ヒューッという音が聞こえたかと思うとパーン、ドーンッパチパチと夜空に音を響かせて、赤、オレンジ、緑、黄色、光の花が咲き乱れた。
ひときわ大きな黄色い花火が夜空を明るくした時は、あまりにも綺麗で、真紀は、息を飲んだ。

「うわーっ」

建物に邪魔されることなく、花火を鑑賞できる川沿いの土手、あちらこちらから歓声が聞こえる。

真紀は、買ってもらったフランクフルトを食べるのも忘れ、夜空の花に見惚れていた。

「きれい」

「ああ」

賢也は、途中で配っていた団扇を手にパタパタと仰ぎながら空を見上げた。
花火が綺麗だと思ったのは、初めてだ。
好きな女と一緒にいるだけで、まるで世界が変わったみたいだ。
自分の人生は、ずっと灰色の世界だった。それが、今では、カラフルな色がついて何をしても楽しいと思える。生きていると感じる。生まれてきて良かったと初めて思った。

「ケチャップ」

「えっ」

「口、ついてんぞ」

賢也は、笑って真紀の唇をペロッと舐めた。

「子供みたいだな」

「・・・・子供じゃないよ」

「夜店見たとたん、あれ欲しい、これ欲しい。これやりたいってはしゃいでいたのは、誰だよ」

からかうように言うと、真紀は、ぷくっと頬を膨らませた。

「いいじゃない。楽しいんだから。賢也は、楽しくないの?」

「俺が一番楽しい時は、お前を抱いている時だな」

「あー、そう。本当、エッチだよね。ちっともロマンチックじゃないし」

パクリとフランクフルトをかじり、モグモグする真紀を見て、賢也は、声をあげて笑った。

「お前も色気ねぇよな。せっかく、そんな可愛いカッコウしてんのに、デカい口開けてフランクフルトかじってんだからな」

「美味しいからいいの」

プイッと背を向けた。

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